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萩尾望都 AWAY に期待

AWAY-アウェイ- 1 (フラワーコミックス)
萩尾 望都
小学館 (2014-07-10)


私にとって萩尾望都はSFの人だった。

もちろん『ポーの一族』のような幻想ロマンや、『トーマの心臓』や残酷な神が支配するのような愛と哀しみの物語もすばらしい。
しかし、やはり卓越した表現力で描かれるSFマインドあふれる作品が一番好きなのだ。
いったい誰が『百億千億』のようなビジュアル化しにくい異世界を描けるだろう。
『銀の三角』のようなひとつの種族の夢を、『スターレッド』の地球人とは違う目を持つ火星の少女の視覚を、『A-A’』のような切ない追憶を。

星の再生を描いた『マージナル』のあと、しばらく萩尾望都はSFから離れる。
『バルバラ異界』もあったが、あれは途中から方向転換があったようで、最初のイメージからは離れたんじゃないかと思う。同じように方向転換した『海のアリア』は成功したようだったが、『バルバラ異界』は少し世界が縮小したようだった。

実はここのところ萩尾望都が描いていた『ここではないどこかのシリーズ』は私には少し不満だった。
漫画家は年をとるとこじんまりとした自分の世界に入っちゃう傾向があるんじゃないかと思っていた。
谷口ジローがハードボイルドからお散歩人生へ移ったように(いや、『犬を飼う』も『孤独のグルメ』も『欅の木』も傑作だけど)パワーが落ちちゃうような気がしてた。
『王女マルゴ』の連載が始まって萩尾望都の体力が落ちてないことは分かったが、私はやはりSFが見たかった。
そこで始まったのが『AWAY』だ。

何故か大人がいなくなった世界。残された18歳以下の子供達は持っている知識と行動力で生き抜いてゆく。

この設定は小松左京の『お召し』を思い出した人も多いだろう。
実際、原作は『お召し』だ。しかし、この作品には萩尾望都独自の設定も加えられている。
それが向こうの世界、つまり子供が消えた方の世界だ。
18になって向こうへ戻った子供が直面する現実も描かれている。
子供の頃初めて『お召し』を読んだとき、じつは私も子供が消えた側の親のことを考えた。
親達は子供を消されないようにするためにいろいろ考えるだろう、それが無理とわかればどうにかして連絡をとるのではないか、と。
『AWAY』はそんな私の疑問への答えだった。

2011年3月のあの震災の時から、萩尾望都が福島原発被害に心を突き動かされていることは一連の作品でわかっていた。
今回の話にも10年前に東京で大きな災害があったという設定の上で語られている。
子供たちは体内にGSPを埋め込み安全教育を受けて防災訓練も受けている。
自分の身は自分で守るという訓練ができているという設定(『お召』よりは動きやすい設定)。
彼らは子供達だけが取り残されて不安の中で必死に行動し、
理不尽に殺されたり、知識がないゆえに命が救えなかったりする。
その様は、何故か封鎖されたフクシマの村の中で起こっているようにも見える。
いや、もしかしたら彼らは取り残された牛や犬や猫なのではないだろうか。それは考え過ぎなのか。

『AWAY』は設定はSFだが話はパニックサスペンスだ。
これから子供達が直面するさまざまな問題や困難、それをどうやって乗り越え、
最終的に『お召し』のような世界を作り上げるのか。

できるだけ長く続いて、しかしきっちり完結させて頂きたい。

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