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今こそ読むべき 「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」

2014年7月。
ジュンク堂に入った瞬間、この本のポスターが目に飛び込んできた。
次には平台でこの本を探し手にとっていた。
これは買わなきゃ。今、買って読んでおかなきゃ、と。

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震災があったあの2011年。私の周辺でも紙やインクが足りないらしい、本が出せないかもしれない、という噂は聞いていた。
しかし、本はまだんなく印刷されていた。
私達はこの本を作る紙がどこからきたのか、どうやって作られているのか知らない。
私は文筆業も編集もやったが、知っているのは印刷会社までだ。
印刷会社には紙はある。しかしその紙もまた製紙会社で作られているものだ。

震災で東北石巻にある日本製紙石巻工場が被災した。
たかが工場一つとはいえ、その工場で出版物に使う紙の1/4が作られているとしたら。

日本の出版業のダメージはすさまじい。

最新鋭の紙を作る機械は戦艦大和と同じ大きさで、スカイツリーと同じくらいの値段だというから、その規模がわかうだろう。
この機械は1日1000㌧の紙を作り出す。
1000㌧と言ってもピンとこないが、文庫が400万部で1300㌧と言えば少しはわかるかもしれない。
毎日毎日文庫を300~400万部作ってるのだ。

その供給が止まってしまった。

この本はそんな巨大工場の被災と復興を描いた本だ。

本の手触りを、紙をめくる快感を、
書棚に並ぶ本の背を愛する人は、
とにかく読め。


なお、この本の売上の1部は小学校の図書室の図書の購入代に充てられる。

紙つなげ!彼らが本の紙を造っている [ 佐々涼子 ]

価格:1,620円
(2016/3/14 14:47時点)
感想(5件)




本は8章とプロローグ、エピローグからなっている。
各章では工場で働く人たちのいろんな部署での立場からの絶望と希望を、被災と復興を描いている。
工場の責任者、総務、警備部、電気、ボイラー、野球部、社長、関連会社、そうした人たちが自分たちの仕事を、打ちのめされながら、困惑しながら、復興に向けて戦っていく。
工場内に入りこんだ瓦礫や土砂を、スコップで、手で、スプーンでかきだしてゆく。紙をつくるときの粘液をひしゃくでドラム缶100本分以上もすくいだす。
流されたロール紙を120箇所以上にわたって撤去しにいく。
水を含んだ紙は重く、崩れやすいので鎌で切れ目を入れ手でちぎっては撤去するのだ。
被災した紙がどんな状態になっているかなんて、誰も知らなかっただろう。
工場内には流れ着いた遺体もたくさんあった。その遺体を運び出すのは自衛隊ではなく、工場の人達だった。

さまざまな困難を乗り越え、8章でようやく最初の機械が動き出したシーンでは目頭が熱くなってしまった。

わたし達は知るべきなのだ。

愛する本がどうやって作られるか、日本の文化を支える紙がどうやって作られるのか。
電子書籍もいいかもしれない。
でも本は決してただの情報ではない。

形となって手にしたとき、大量に出版されたものだとしても、それが図書館、古書店のものだとしても、世界にひとつの私だけの本なのだ。


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プロフィール

霜月りつ@文筆業

Author:霜月りつ@文筆業
白城るた・あるいは 真坂たま、白雪真朱と名乗ってBLやTLやファンタジーを書いてます。最近は霜月りつ名義で時代物も。
主に読書と映画と着物と同人の日々。独断に満ち満ちてマスので、ついてこれる人だけれっつごー。
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